Wins Above Replacement

WARとは?

選手の総合的な貢献を勝利数に換算して表す指標。

WAR(Wins Above Replacement)とは、選手の総合的な貢献を勝利数に換算して表す指標のこと。

マイナーからの昇格などで補充できる水準の選手と比較して、どれだけ多くの勝利に貢献したかを推定する。

リプレースメント・レベルとは?

WARの基準となるのが「リプレースメント・レベル(Replacement Level)」と呼ばれる代替可能水準である。

これは、マイナーからの昇格やFAなどで比較的容易に補充できる選手を想定した水準を指す。

特定の選手を指すものではなく、リーグ平均よりも低く設定された基準である。

野手のWARはどう計算される?

野手のWARは、主に次の要素から計算される。

  • 打撃:安打や本塁打、四球などによる得点への貢献
  • 走塁:盗塁や進塁などによる得点への貢献
  • 守備:打球処理や送球などによって防いだ失点
  • 守備位置補正:守備位置による違いを調整する

これらの貢献を得点単位で評価し、リーグや球場の影響、代替可能水準との差なども考慮して、勝利数に換算する。

1勝に相当する得点数はシーズンによって異なるが、おおむね10得点が1勝分の目安となる。

このため、打撃成績が同じでも、守備や走塁に優れた選手の方がWARは高くなることがある。

守備位置による補正

WARでは、異なる守備位置の選手を比較するために、守備位置ごとの補正が行われる。

例えば、同じ打撃成績と走塁成績を残し、それぞれの守備位置で平均的な守備をした遊撃手と一塁手がいるとする。

遊撃手は一塁手より守備の要求水準が高いため、WARでは遊撃手の方が高く評価される。

この補正によって、遊撃手や捕手、一塁手、指名打者など、役割の異なる選手を共通の尺度で比較できる。

fWARとrWARの違い

WARには複数の算出方法があり、代表的なのがFanGraphsの「fWAR」とBaseball-Referenceの「rWAR(bWAR)」である。

どちらも代替可能水準を基準とするが、打撃や守備、投球の評価方法に違いがある。

野手では、特に守備評価の違いがWARの差につながりやすい。

FanGraphsでは、2016年以降の守備評価にStatcast由来の指標を採用している。守備範囲を示すOAAを得点換算した評価に加え、送球や捕手のブロッキングなども考慮する。捕手のフレーミングについては、独自の評価指標を使用している。

Baseball-Referenceでは、主にDRS(Defensive Runs Saved)を使用して守備を評価する。古い年代については、利用できるデータに応じて別の指標を使用している。

そのため、同じ選手でもfWARとrWARの数値が一致するとは限らない。

投手のWARはどう計算される?

投手WARは、投球内容と投球回数を基に、代替可能水準の投手との差を評価する。

fWARは、主にFIP(Fielding Independent Pitching)を基準としている。

FIPは奪三振、与四球、死球、被本塁打などを基に投手を評価する指標で、打球が安打になるかどうかの影響を抑えている。

ただし、fWARの計算では通常のFIPをそのまま使用するわけではなく、内野フライや球場、捕手のフレーミングなども考慮される。

rWARは実際の失点数を出発点とし、球場や対戦相手、味方の守備力などを調整して評価する。

例えば、実際の失点は少なくてもFIPが高い投手は、rWARよりfWARが低くなる場合がある。

反対に、FIPが優れていても実際の失点が多い投手は、fWARの方が高くなる場合がある。

救援投手のWAR

救援投手のWARでは、投球内容だけでなく、登板した場面の重要度も考慮される。

この重要度を示す指標が「Leverage Index(LI)」である。

LIは平均的な場面を1.0とし、数値が高いほど試合の勝敗に影響しやすい状況を表す。

例えば、1点差の9回に登板するクローザーは、大差がついた試合で登板する投手よりもLIが高くなりやすい。

FanGraphsでは、救援投手のWARに「(1+登板時の平均LI)÷2」という補正係数を使用する。

登板時の平均LIは「gmLI」と呼ばれ、仮に2.0なら補正係数は1.5となる。

この補正には、クローザーが離脱しても代わりの選手がすぐにクローザーを務めるわけではなく、ブルペン全体の役割が繰り上がることも考慮されている。

先発投手には、このLIによる補正は適用されない。

Baseball-Referenceでも救援投手の登板時のLIが考慮されるが、計算方法は異なる。

WARの数値はどう見る?

WARは積み上げ式の指標であり、成績だけでなく出場機会の多さも数値に影響する。

例えば、WARが0.0なら代替可能水準と同程度、4.0なら同程度の出場機会を与えられた代替可能水準の選手より、約4勝分多く貢献したと推定される。

代替可能水準を下回れば、WARがマイナスになることもある。

フルシーズン出場する平均的なレギュラー選手は、おおむね2 WARが目安となる。

ただし、出場機会が限られる控え選手や救援投手はWARが低くなりやすいため、数値だけで選手の実力を比較することは難しい。

WARを使う際の注意点

WARは選手の総合的な貢献を比較できる指標だが、実際にチームの勝利数を何勝増やしたかを直接数えたものではない。

また、守備評価や守備位置補正などには推定が含まれるため、小数点以下の差まで厳密に比較することは適切ではない。

例えば、WARが5.2の選手と5.0の選手を、0.2の差だけで優劣が明確だと判断するのは難しい。

fWARとrWARでは算出方法も異なるため、選手同士を比較する際は同じ種類のWARを使用することが基本となる。

WARは選手の総合的な価値を把握するために使い、打撃・守備・走塁・投球などの個別指標と併せて評価することが望ましい。

最終更新:2026年10月23日